秋田魁新報社は昨年度、いじめや不登校など子どもを取り巻く問題について考える創刊150年企画「だから大丈夫~こどもを守るプロジェクト」を展開しました。日本を代表するラッパーの般若さん、SHINGO★西成さんを招き、特別ライブなどを開催しました。本音をうたうラッパー2人のメッセージは、苦しさや生きづらさを抱える子どもたちと保護者らに届き、大きな反響が寄せられました。本年度はこれを発展させて「REAL(リアル)だから大丈夫~子どもを守るプロジェクト」を開催します。子どもたちが生きやすいと感じられる未来をつくるために、県民の参加を募り、身近な社会問題や日常生活の中で思うことなど、普段は言わずにいる本音を、あるがままに、リアルに、ラップで表現してもらいます。
「REAL だから大丈夫
~こどもを守るプロジェクト 決勝大会」ダイジェスト動画
優 勝
歩路(みち)の途中
MC Latin
(中村 佑/AGE 15/横手市)
宣言通り 賞金は母へ
「みんなの声援を俺がかっさらう」。ラップの冒頭、観客に向かって宣言した。決勝大会出場者の中で最年少ながら、誰よりも勝ち気。「絶対に俺はやれる」と強気の姿勢を崩さなかった。宣言通りに優勝を決め、「力を出し切れて、超絶気持ちいい」と声を弾ませた。
「中学生になって、遊びに出かける度にお母さんからお金をもらっていた。
お金を使いすぎて叱られたこともある。もう迷惑をかけたくない」。その気持ちを真っすぐに歌った。<散々かけてきた迷惑 親の目からは1粒の涙><もう心配させねぇこれから>
表彰式では、客席にいた母の瞳さんをステージに呼び、審査員から受け取ったばかりの賞金30万円のパネルを瞳さんに手渡した。
【講評】15歳とは思えないほど冷静で、泥臭く内なる闘志を表現していた。未来を変えようとする姿が印象的だった。(秋田魁新報社営業局長・疋田大三)
ベストオブアンダー25賞
いたみわけ
MC Soin
(工藤 友愛/AGE 17/秋田市)
優しさ 情熱的に歌う
<世界のどこかで誰か泣くなら 僕は心から笑えないや><綺麗事が綺麗と言える夢を見る>。他者を思い痛みを分け合うことの尊さを説いた優しさあふれる歌詞と、情熱的な歌い回しが観客を引きつけた。
普段はボーカロイドと呼ばれる音声合成ソフトで楽曲を作りユーチューブで発表している。今夏、大手音楽会社などが主催する10代限定の音楽イベントに出場し、決勝目前の3次審査まで勝ち上がるなど成長著しい。
ラップの中盤では半生を振り返り、音楽活動などで納得する結果を出せないことを<重ねる参加賞>と歌って嘆いたが、決勝を終え「賞をもらえて自信がついた」と笑顔を見せた。
【講評】Soinは小さい頃にダンスを習っていて、今は音楽活動に情熱的に取り組んでいる。チャレンジして経験を積んでいる姿を見てうれしくなった。(進藤臣智)
ベストオブオーバー26賞
社会に馴染めない君へ
MC 祥瑞
(大塚 祥磁/AGE 33/秋田市)
2年越しの夢かなう
2年前に奮発して買ったスーツを着て決勝に臨んだ。<長年社会に出られなかった><人並みに働けるようになってきた><調子に乗って38万のスーツも買っちまったぜ>と歌うと、会場は歓声で湧いた。「いつか大好きな音楽で自分を表現する時のために、このスーツを買った。夢がかなった」と喜んだ。
曲の山場となる終盤の歌詞に、いつも自分に言い聞かせている一言をつづった。<最低限そこにいるだけでいい>。困難に直面しても、この言葉を支えに<震える心を奮い立たせて><君は少しずつ強くなっていける>と訴えた。
【講評】困難を乗り越えて明るいパフォーマンスを見せてくれた。学校や社会が息苦しいと感じて悩んでいる子どもたちに未来を示してくれた。(清水隆成)
ベストリリック賞
choose yourself
MC meg
(鎌田めぐみ/AGE 53/秋田市)
子どもを鼓舞する歌
<生きやすいみらいってなぁに? そんなものないわよ>。フリースクールの管理者として、学校に通えない子どもたちに寄り添っているからこそ、子どもたちを鼓舞する厳しい言葉を歌詞に選んだ。<本当は君、何したい?><きっと自分らしくいたい そうでしょ?><人のせいにしてないで><胸はって生きて!>。「子どもたちを子ども扱いしないで、厳しいこともはっきり言うのが、いつもの私。これが私のリアル」と語った。
決勝当日は53歳の誕生日。ステージ上で観客とバースデーソングを歌った。「こんなにたくさんの人に囲まれて幸せ。みなさんも一歩踏み出して」と呼びかけた。
【講評】「人に惑わされず自ら考えて行動しよう」というメッセージが伝わってきた。子どもたちを支える立場から発する言葉は重みがあった。(BERABOW)
羅漢 審査員特別賞
記憶
MC 小雪
(高橋 美名/AGE 16/大仙市)
心の居場所 伝えたい
大好きな父親が亡くなったのは4年前。その死を少しずつ受け入れ前に進んできた。<強くなったね><褒めてあげよか>。「お父さんが生きていたら、きっとそう言ってくれる」と思ってこの歌詞を書いた。今も大仙市の不登校支援カフェ「ふらっと」に通い、気持ちを支えている。「ふらっとのような居心地のいい場所があることをお父さんにも教えてあげたかった」。その思いは<そこに光を指してくれたのは 誰だと思う? 心の居場所>と歌った。「お父さんが天国で好きなお酒を飲んで私を見守ってくれていたらいいな」
【講評】ラップを歌うことで苦しんだ経験を音楽やアートに変えていくことができる。歌詞も歌い方も魅力を感じた。音楽を続けていってほしい。(羅漢)
BERABOW審査員特別賞
fAKE WORLD
MC WiG
(佐藤 翔/AGE 22/潟上市)
大舞台 堂々の1番手
決勝大会の1番手として登場。半年ほど前にラップを始めたばかりだが、緊張感みなぎる会場の雰囲気にのまれることなく、ステージ上を所狭しと動き回るパフォーマンスで観客の心をつかんだ。「音楽で地域を盛り上げたい」という思いを<地元上げる為に課すミッションで もらう県民賞><明日もみんなが笑えてるように 来たんだ俺がREALを吐きに>と歌った。「決勝でみんなのパフォーマンスを見て、もっと成長したいと思った。少しずつ前に進んでいきたい」
【講評】初開催の大会の1番手は肝心。とても素晴らしいパフォーマンスだった。これからも音楽を続けて。またステージで会いましょう。(BERABOW)
清水隆成審査員特別賞
My life
MC 破隆
(田村 優真/AGE 22/秋田市)
自由にやる 美学歌う
中学の数学教師を目指しながらラップをする自らの姿を<俺は握る 昼はチョーク夜はマイク>と歌った。「堅苦しい先生にはなりたくない。自由にラップをしたり、ダンスをしたり、好きなことをして輝く子どもたちを育てたい」という思いは<囚われるな常識の中><自由にやる、それが俺の美学 だろ?><主人公は1人しかいない>と表現。<価値のある一歩踏み出せ>と自らを鼓舞した。「決勝大会に出たことで、僕の音楽活動について知ってもらえた。音楽も大学も頑張りたい」と語った。
【講評】教育とラップを両立するパワフルな先生が身近にいたら、子どもたちは楽しいし心強いだろう。将来を楽しみにしている。
(清水隆成)
進藤臣智審査員特別賞
Fear
MC kylo
(生駒 大晴/AGE 16/由利本荘市)
揺れる心さらけ出す
「不安や悩みを抱える全ての人にささげます。上向いていこうぜ」。会場にこう呼びかけて歌い始めた。不安障害と向き合う中で揺れる感情を<俺を襲い苦しめた不安と恐怖><気分はかなり憂鬱で心と体が崩れる>とさらけ出し、<這い上がってみせるぜもうじき>と前を向いた。歌い終えて「楽しくて、気持ち良かった」と充実した表情。「ラップは味方。ヒップホップは自分の不安をなくすためのものだと思っている」とかみしめた。
【講評】kyloがダンサーとして活躍していることは知っていたが、ラップも上手で驚いた。大舞台に慣れていて物おじしないし、声量も十分だった。(進藤臣智)
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